水素を二次エネルギーの柱の1つとするというのは、以前であれば夢物語でした。しかし、関係する方々のご尽力によって技術も十分に育ち、今では実現が見え始めています。
1つの要因は燃料電池の進化です。水素から電気へと高効率に変換できるようになってきています。電気を利用して水から水素を製造する水電解も、投資が進み着実に技術が進歩しつつあります。
水素を貯蔵・供給するインフラも整いつつあります。ラストワンマイルの重要なインフラとして、政府は水素ステーション整備を支援しています。
このように変換技術、貯蔵技術が着実に進化したことで、水素を現実的に利用する社会の絵が描けるようになってきました。
2020年10月に菅義偉前首相が「2050年カーボンニュートラル達成」を宣言後、経済産業省のグリーンイノベーション戦略推進会議はCO2排出削減の方向性を示しました。電力部門については省エネと電源の脱炭素化を、非電力部門については電化と燃料の省エネ化、天然ガス、水素、バイオ、CCUS(CO2の回収・貯留・活用)の活用を盛り込んだほか、ネガティブエミッション技術の重要性も指摘しています。
政府の成長戦略会議が策定した「グリーン成長戦略」では成長が期待される14の重要分野の実行計画を示しました。そのうち、7分野に水素や燃料電池が関係しています。政府は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に2兆円規模の「グリーンイノベーション(GI)基金」を立ち上げ、10年間にわたり研究開発に取り組む企業の支援を始めています。
2021年に政府はカーボンニュートラル達成に向けた途上の2030年の温室効果ガス排出量を従来の2013年度比26%減から大幅に引き上げ、46%減とする目標を示しました。やるべきことはさらに前倒しになっています。GI基金や様々なプロジェクトを通して、その目標を達成していかなくてはなりません。
2021年10月に策定された「第6次エネルギー基本計画」は、2030年の電源構成のうち1%程度を水素・アンモニアとする目標を掲げました。これはとてつもなく大きな数字です。現在、1年間の水素供給量は約200万tです。これを2030年には300万tにしなくてはなりません。さらに2050年を見据えると2000万t程度に拡大することが必要となります。
グリーン成長戦略では2050年時点に燃料電池トラックで600万tの水素利用を見込んでいます。今、トラックが燃料に使っている軽油がすべて水素に置き換わって初めて実現できる数字です。そのほか、水素発電で500万~1000万t、水素還元製鉄で700万tといった数字が並んでいます。いずれも非常に高いハードルですが、何とか乗り越え達成しようと動いているところです。
■ 脱炭素化に向けた技術イノベーションと「水素」-分野別CO2排出量と主な個別技術
