エネルギーは国にとって重要戦略物資です。利害が対立すれば取り合いになり、時には戦争が起きます。日本は明治維新で富国強兵、産業立国を目指し、そのために必要な資源を獲得しようと海外に進出しました。その挙げ句が1945年の敗戦です。明治維新から敗戦まで77年の月日がたっています。
そして、その敗戦から2022年までも77年です。2022年という年は、蹉跌を乗り越えよみがえった日本が、新たな国のあり方を考える上で、非常に意味のある77年目だったと思います。
JOGMECとなったのは2004年ですが、前身の金属鉱物事業団から数えると2023年は60周年に当たります。JOGMEC自身も還暦を迎え、もう一度根っこから立ち位置を考える重要な節目にあります。
日本政府は2050年のカーボンニュートラル達成を目指しています。CO2削減については、これまでも「何%削減」という目標に沿って取り組みが行われてきました。しかし、ネットゼロとなると全く別次元です。CO2を極限まで減らし、それでも出てくる排出量を相殺しなくてはなりません。極めて高いハードルで、2050年までに実現しようとすれば、従来にない大胆で新しいことに取り組む必要があります。
一方で「経済安全保障推進法」が成立し、セキュリティや安全保障の概念を前面に出した政策転換も図られています。2022年に法改正によってJOGMECのファンクションが拡張した背景には、カーボンニュートラルやエネルギーセキュリティへの対応の必要性があるのは間違いありません。
かつて世界には冷戦という時代がありました。冷戦が終結し、ポスト冷戦の時代になると、イデオロギーで対立する枠組みが崩れ、世界は1つになるという考えが浸透しました。俗に言うグローバリズム、ボーダーレスです。経済関係が進化し、人・物・金が自由に移動するようになれば世界は均質化し、争い事などは起きないと考えられていました。
しかし、実際はどうでしょうか。残念ながらグローバリズムは破綻を来しつつあります。ウクライナ危機に象徴される通り、ボーダーレスどころか、国境や地域を痛感させられることが増えています。ポスト冷戦のスキームは崩れました。今の状況をポスト冷戦のさらなるあとで、「ポストポスト冷戦」と呼ぶ人もいます。
人・物・金のうち、物と金は自由に動きます。しかし人はそうはいきません。人には思いがあります。歴史も宗教も様々です。均質化によって理想の世界が出来上がるという発想には無理がありました。欧州が移民問題で大変苦労しているのもその1つの表れです。それぞれの人や民族が持つバックグラウンドを尊重し、均質性よりも多様性を重視するというのが今の流れです。
世界の価値観が均一ではないことを象徴する事例があります。2022年10月、国連総会は緊急特別会合を開き、「ウクライナの領土保全:国連憲章の原則の擁護」と題し、ロシアがウクライナ東部4州で実施した住民投票とロシアへの併合は違法だと非難する決議を行いました。日本人の感覚からすると、ロシアが一方的にウクライナを侵略しているのですから、どの国も賛成するはずと思うかもしれません。しかし、実際はそうではありませんでした。賛成したのは日本や米国など143カ国です。ロシアやベラルーシなど5カ国が反対し、35カ国は棄権、10カ国は投票しませんでした。
単純な国の数でなく、国内総生産(GDP)ベースで見ると賛成は72%、その他が28%となります。人口ベースでは賛成が45%、その他が55%と、反露の姿勢を明確に示した国は半分にも届きません。全くマジョリティではないのです。世界の人々は同じ思いを持つという発想が、いかに事実と異なるかを示す事例だと思います。
■ カーボンニュートラル
