日本エネルギー経済研究所(IEEJ)は「アウトルック2023」で、世界のエネルギー需給の見通しについて、2つのシナリオを示しました。
過去の趨勢的な変化がそのまま継続する「レファレンスシナリオ」では、2050年の世界のエネルギー消費は2020年の1.3倍に増加する見通しです。一方、エネルギー・環境技術の導入が強化される「技術進展シナリオ」では、2030年頃にエネルギー消費が減少に転じ、2050年にはおおむね2020年の水準になるという見通しになっています。
「レファレンスシナリオ」では、2050年時点で一次エネルギーの8割を化石燃料が占めます。「技術進展シナリオ」でも6割が化石燃料です。化石燃料の中でも増えるものと減るものがあり、石炭は減り、天然ガスは増える見通しになっています。
「技術進展シナリオ」では、2050年時点の世界のガスの需要は4.4Tcm、液化天然ガス(LNG)の需要は4億tと、2020年よりそれぞれ14%、13%増えています。「レファレンスシナリオ」では、2050年のLNGの需要は7.5億tになっています。つまり、どの道に進んでも、天然ガスの需要は2050年まで減らないということです。
石油については、現在日量1億バレルほどの需要が、2050年には4割減り、日量6000万バレルになると見通しています。
これらの見通しからは、需要が減ることのない天然ガスやLNGについては、何よりもしっかり確保することが重要だということが分かります。ガスの獲得は、ウクライナ危機を踏まえ、世界的な課題にもなっています。
今年5月、広島で先進7カ国(G7)首脳会合(サミット)が開かれました。コミュニケには、「各国のエネルギー事情、産業・社会構造及び地理的条件に応じた多様な道筋を認識しつつ」ネットゼロを目指すことが明記されました。
このコミュニケをまとめるのは非常に大変だったと聞いています。日本が議長国であることが幸いし、また経済産業省の方々の奮闘により、ゼロカーボンを実現する道筋が多様であることを盛り込んだことは、非常に意味のあることだったと思います。さらに、「ガス部門への投資が、現下の危機及びこの危機により引き起こされ得る将来的なガス市場の不足に対応するために、適切であり得ることを認識する」という一文も盛り込まれました。
昨今、金融界では化石燃料に対する融資はしない方針が打ち出されつつあります。しかし、エネルギー需給見通しに従えば、ガス分野は今後も設備を増強する必要があります。コミュニケで、ガス部門への投資はなお必要と明記できたのは非常に大きな意味がありました。