スペシャルリポート

エネルギートランスフォーメーションと
石油資源開発の未来
経済性も考慮しつつ、上手にカーボンニュートラル戦略構築を

脱炭素のルールづくり参画が重要

 カーボンニュートラルの達成に向け、CO2排出量を削減するには、再生可能エネルギーの導入量を増やすことが必要です。実は日本の再エネ導入量は現在、世界第6位の位置を占めています。太陽光発電では世界第3位です。2012年から2020年の8年間で導入量を約4倍に拡大するという、世界トップクラスの増加スピードを実現しました。

 再エネ導入の拡大には、コストもかかっています。昨年の標準世帯の再エネ賦課金は年間1万2000円ほど。毎月、各家庭が1000円ずつ再エネのための負担をしたことになります。

 太陽光や陸上風力の導入には、平地など適地の確保が重要ですが、日本は山が多く平地が少ない国です。平地面積当たりの再エネ発電量を見ると、日本は世界最大です。限られた国土の中で、国民が負担をしながら、最大限に再エネを導入してきたということです。

 再エネのコストを見ても、日本は世界各国に比べかなり高くなっています。EUは北海からの偏西風が一年中安定して吹きますが、日本の風は気まぐれです。北海道の西側と東北地方の日本海側の風況が良いと言われますが、北海地域と比較した際の設備利用率は3分の2程度にとどまります。効率が低くなる分、コストの高い再エネ電源になっています。

 日本は日照にも恵まれているとは言えません。アラブ首長国連邦(UAE)の日照時間が平均1日12時間なのに対し、日本は平均5時間にとどまり、太陽光設備の利用率は下がります。地震や台風などの災害も多く、設備の安全性を保つための建築基準が厳しくなり、ここでもコストがかさみます。

 スティーブン・クーニンという物理学者が書いた『気候変動の真実』という本の中に、日本について言及した箇所があります。「世界の温室効果ガス排出量の2%を占めるに過ぎない日本は、削減目標を達成するよりも、全世界に展開可能な低排出エネルギー技術を新たに開発実証することこそ、世界への大きな貢献になる。様々な戦略の費用と効果を正しく理解すべきだ」という内容です。この意見は、私ももっともだと思います。

 東京大学の特任教授である有馬純さんの『亡国の環境原理主義』という本では、「反原発主義」「再エネ原理主義」「環境原理主義」が日本を滅ぼすと指摘しています。「こういう見方もある」と参考にしていただきたいと思います。

 以前、私は『国際標準が日本を包囲する』という本を書いたことがあります。欧州が国際規格を戦略化し、米国がデファクトの主導権を握る中、日本企業の「よいものを作れば売れる」というスタイルでは、市場競争力を奪われてしまうと警鐘を鳴らす内容です。

 残念ながら、結果的にその通りになってしまいました。この本を刊行した1998年当時、日本の家電産業は世界を席巻していましたが、今は全く様相が異なります。EUが巧みに国際標準化機構(ISO)や国際電気標準会議(IEC)で世界規格をつくったのに対し、日本はそのルールづくりに加わらなかったからです。

 例えば、欧州の洗濯機はお湯をわかし煮て洗います。煮て洗う洗濯機だけがIECの標準になり、日本の洗濯機は東南アジアや中東に輸出しても「規格に合っていない」と言われるようになりました。こういうことは、あらゆる場面で起きています。

 これから、脱炭素の実現に向けて、世界でいろいろなルールづくりが始まります。日本がそこにいかに加わるかが、非常に重要なポイントだと思っています。

脱炭素のルールづくり参画が重要

 
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