柏木:GXに関連する技術は極めて多岐にわたります。国際的な動向を見ながら、いかに選択と集中を行うかがカギとなります。東芝ではどのように予算配分を決めていますか。
岩城:どの分野にどれだけ投資するかの判断はとても難しいものです。国の政策として脱炭素という大きな方向性があり、「GX2040」や「Society 5.0」といったビジョンやコンセプトが提示されています。それらに基づいて将来の社会像を描き、バックキャストしてロードマップを策定するという進め方になります。
また、当社の強みを活かして、社会にどのように貢献しビジネス展開できるかという視点も重要です。これらを両立させながら、戦略的にどの分野に投資するのかを決めています。
一方で、基礎的な技術力の維持や向上も重要です。そのため、基盤技術への投資も継続的に行い、人材育成も図っています。
柏木:日下部さんは経済産業省の官僚を経験した上で企業の経営者になられました。政府のエネルギー政策をどのような形で経営に織り込んでいますか。

日下部 聡(くさかべ さとし)氏
三菱電機 専務執行役CRO/元資源エネルギー庁 長官
1960年生まれ。1982年3月横浜国立大学経済学部卒業、同年4月通商産業省(現経済産業省)入省。2012年経済産業省総括審議官、2013年同官房長、2015年資源エネルギー庁長官を歴任。2018年東京海上日動火災保険顧問、2019年三菱電機顧問を経て2020年三菱電機常務執行役に就任。2024年専務執行役CRO(法務・知的財産渉外、リスクマネジメント、経済安全保障、輸出管理、産業政策渉外担当)、2025年専務執行役CRO(リスクマネジメント・経済安全保障、法務・知的財産渉外、安全保障貿易管理担当)、渉外担当。現在に至る。
日下部:役所の政策と企業の経営戦略をマッチングさせるには“翻訳”が重要です。日本では、GXの様々なプロジェクトの裏側でカーボンプライシングという新たな価格メカニズムができました。それをどのような形で社内に浸透させるかを考えなくてはなりません。役所と企業の言語体系にブリッジをかける必要があるのです。
例えば、生成AIを生み出すデータセンターのエネルギー効率を上げるためには、三菱電機は総力戦での戦いが求められます。重電のシステムをどう変えるのか、通信用半導体の性能をいかに上げるか、空調の技術開発をどう進展させるか、いかにレアメタルのサプライチェーンを構築するかなど、全ての事業本部が絡む話になります。
複数の部門を集めてコーディネートすることが重要になるため、当社は今、「ライフ」「インフラ」「インダストリー・モビリティ」という3つの領域で横串を通す試みを強化しています。短期的、中期的、長期的にどういう手を打つか、代替技術を用意するかといったことを検討し、会社の経営戦略につなげています。