
山﨑 隆史(やまざき たかし)
コージェネ財団専務理事
山﨑:分散型エネルギーシステムの構築は海外でも進んでいます。佐々木さんは昨年、欧州に視察に行かれたと聞いています。欧州の先行事例をご紹介いただけますか。
佐々木:昨年10月、芝浦工業大学の村上公哉教授を団長として日本熱供給事業協会が行った「欧州地域熱供給事情視察」に参加しました。ドイツではアシャッフェンブルクというシュタットベルケを視察し、電力・熱を発生し地域に送るプラントを見学しました。このプラントのすごいところは燃料が木質チップであることです。すべて再生可能エネルギーで、熱も地域暖房で活用されており、日本の先を行く取り組みだと大変勉強になりました。
熱供給事業の先進国といわれるデンマークの視察でも、熱の使い方が非常に上手なことに感銘を受けました。バイオマス、ゴミ焼却の排熱、工場の排熱なども集め、需要家に熱を分配しています。最近では太陽熱を季節間蓄熱して冬に使うという取り組みも進めているそうです。
エネルギー密度が高く、冷房需要が大きい日本でデンマークのやり方をそのまま応用することはできませんが、改めて、脱炭素化に向けては、徹底した高効率化と未利用熱の活用が必要という思いを強くしました。
山﨑:川又さんは昨年7月までドイツの日本大使館に勤務されていたそうですが、シュタットベルケのような先進的な仕組みを日本に導入する際の課題は何だと考えますか。
川又:シュタットベルケはドイツに900社あり、ドイツの電力小売りの50%を供給する大きなプレーヤーとなっています。その実態は総合インフラ企業で、電力やガスのほか、バス交通、上下水道、公営プールなどの事業も手掛けています。バス交通や公営プール事業は赤字ですが、電力やガスなどの黒字事業から補填することで持続可能になっています。市民もこの構造を理解し、8割の市民がシュタットベルケを選んで契約しています。
今、日本でも自治体新電力が増えつつありますが、ふつうに電力を小売りして、「大手より安い」とうたっているところがほとんどです。シュタットベルケの本質は、地域のために必要な公共インフラサービスを持続可能な形で運営することにあります。価格だけでは自治体新電力は戦えません。
また、日本の自治体新電力の多くは自前の電源を持っていませんが、それでは市場の影響を受けやすくビジネスリスクが高くなります。地域の電源を増やし、地域に残るお金を増やし、その収益を地域の再生可能エネルギーに再投資することが必要だと思います。