スペシャルリポート

グリーンイノベーションによる経済成長
官民連携しスマートエネルギー社会実現を

プロジェクトを見極めた上でファイナンスをデザイン

柏木:確かにコストが下がれば市場が形成されます。それを左右するのは金融です。お金がうまく回れば、新しい技術の社会への実装が進みます。金融界はこうしたエネルギーやイノベーションに対して、どのように対応しようとしているのでしょうか。

原田文代(はらだ ふみよ)氏 日本政策投資銀行 企業金融第5部 担当部長
原田文代(はらだ ふみよ)氏
日本政策投資銀行 企業金融第5部 担当部長
1992年日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。99年日本政策投資銀行国際部所属副調査役、2002年国際協力部調査役を経て02年シンガポール駐在員を務める。05年国際・協力部調査役、08年国際部参事役に。09年世界銀行グループ国際金融公社(IFC)東アジア・太平洋局Senior Investment Officer(インフラストラクチャー担当)に就任。12年DBJ Singapore Limited副社長兼企業金融部長、15年国際統括部担当部長兼企業金融第6部担当部長兼女性起業サポートセンター長を経て17年から現職。

原田文代氏(以下敬称略):パリ協定の発効は日本のエネルギー政策を大きく転換させるものであり、私たち金融機関にとっても非常に重みがあるととらえています。これを受け今、日本政策投資銀行はエネルギー、イノベーション、地域という3つの分野に力を注いでいます。

 日本政策投資銀行の前身は日本開発銀行。戦後すぐに設立され、日本のインフラを支えることを使命に活動を進めてきたという経緯があり、今も電気・ガス・熱供給業への投融資が全体の4分の1を占めています。再生可能エネルギー、送配電、火力、石油・ガスのほか、新分野で水素や蓄電池にも投融資を行っています。

 再生可能エネルギーへの投融資の一例として、イギリスのトライトン・ノール洋上風力発電事業に資金提供しています。9.5メガワットの風車を90基使う事業です。洋上風力発電は今後、日本のエネルギーシステム構築の重要なソリューションになり得るという思いで積極的に取り組んでいます。

 また、水素社会実現のフェーズ1のプロジェクトとして、水素ステーションネットワークの整備にも資金を提供しています。経済産業省や自動車会社、インフラ事業者と協働しながらスキームを構築。水素ステーションは順調に立ち上がっています。

柏木:日本の金融機関は担保がないとなかなかお金を貸そうとしません。その中で、プロジェクトの質を見て資金を提供しているのですね。

原田:ファイナンスの手法はプロジェクトファイナンス、ベンチャーキャピタル、コーポレートベンチャー、エクイティなど多様にあります。エネルギーシステム構築にかかわる一つひとつのプロジェクトを見極め、性質や規模に応じてどこからお金を集め、どう回収するかというファイナンスのデザインを考えることが私たち金融機関の重要な役割だと思っています。

 例えば、日本は再生可能エネルギーの主力電源化を進めていますが、現状ではコストや調整力などに課題があります。今後、発電の領域でコージェネレーション(熱電併給)システムを含む分散型電源の導入、送配電の領域で蓄電池やVPP、デマンドレスポンスの導入、小売りの領域でスマートホームやP2P電力取引の導入などを進めていく必要があります。それぞれの事業、プロジェクトの性質やマネタイズの方法などを細かく見極めてファイナンスをつけていきたい。イノベーションを起こしながらエネルギーシステムを最適化し、スマートエネルギー社会を実現することに貢献したいと考えています。

 
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