スペシャルリポート

我が国のカーボンニュートラル戦略
「エネルギー革命」を日本の成長・発展の契機に

日本の社会・産業にメリットある方向性を探る

柏木:グリーン成長戦略では分散型エネルギーについても「次世代電力マネジメント産業」と題して取り上げています。デジタル技術を駆使し、再エネや燃料電池、コージェネ、蓄電池などを活用することで、効率性にもレジリエンス性にも優れたエネルギーシステムが構築でき、またビジネス・産業の成長・発展にもつながるのではないでしょうか。

田辺:電力に加え、ガス、水道、情報、交通も重要なネットワークであり、5つをまとめることが必要です。例えば、クルマの走行データなどは誰もがほしくてたまらないデータ。こうした交通データとエネルギーデータが結びつけば、様々なビジネスに成長する可能性があります。行政は縦割りですが、垣根を越えて全部一括で見ることが求められます。建物やエネルギーに関係するデジタルプラットフォームの構築で日本は相当遅れています。欧米にはこの分野のプラットフォーマーが出てきていますから、覇権を取られないようにすることが大事だと思います。

小鑓:政府はデジタルという軸で各政策を束ね、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためにデジタル庁を創設します。省庁の意識も高まるはずです。デジタル庁がきちんと機能し役割を果たせるかどうかは日本の将来を左右する問題でもあります。よく見ていただき、引き続きご指導いただきたいと思います。

柏木:最後に、カーボンニュートラルに向けた将来展望について意見を聞かせてください。

田辺:カーボンニュートラルは石炭エネルギー革命の次のエネルギー革命です。我々はその革命をどのように起こせば良いのか、賢く考える必要があります。エネルギーは我々の生活や生業を支える非常に重要な存在です。エネルギー革命によって、日本の未来に暗い影を落とすことがあってはなりません。コージェネを含む分散型電源を活用しながら、我々のライフスタイルのあり方まで、同時に議論をしていくことが必要だと思います。

小鑓:カーボンニュートラルは世界共通の目標になりつつありますが、その中でも国・地域によって様々な切り口や軸があります。それぞれの国・地域に合う形で進めていくことが必要です。EUは7月に「35年にガソリン車の新車販売を禁止」とする案を発表しました。これはクルマにエアコンを搭載していない欧州だからこそ可能な発想です。真夏や真冬にはエアコンがなくてはならない日本でそれを実行したら、電池切れで路上に止まるクルマがいっぱい出てしまいます。

 世界の動向に振り回されず、軸をぶらさず、したたかに日本の社会や産業にメリットのある方向に決めることが必要です。大規模電源と分散型電源のバランスを保ちつつ、50年に「うまくCO2対策を乗り切ってきたな」と振り返ることができるような道を進むことが大切だと思います。

柏木:これまでエネルギーのベースはカーボンでした。そのベースをゼロにしようというのですから、従来とは次元の違う、まさに革命を起こさなくてはなりません。ただ、この機をとらえ、DXを推進し、社会経済システムにイノベーションを起こすことによって、新たなビジネスを生み出すことはできるはずです。カーボンニュートラルが及ぼすインパクトは非常に大きい。それを成長戦略につなげられるか否かは、コミュニケーションや企業間の連携にかかっていると思います。

[コージェネ財団特別講演会2021レビュー2]鼎談

 
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