柏木:トランプ政権の登場によって、世界の温暖化政策は止まる、あるいは逆戻りすることがあるでしょうか。
竹内:今年の夏も、ヨーロッパでは猛暑で人が亡くなっています。気候変動への対策が必要というのは共通の認識、価値観として確立され、後戻りすることはないと思います。しかし、現実にはエネルギー需要は増大していますし、グリーンのためのコスト負担は莫大で、これを誰が負うのかが課題です。
柏木:気温上昇を1.5度程度に抑えないと様々な感染症が広がり人体に影響が及ぶとされています。トランプ政権が温暖化対策に逆行するような政策を打っても、それが本流になるということはないはずですね。
増山さんはエネルギーを巡る世界の状況について、どんな意見を持っていますか。

増山 壽一 氏(ますやま・としかず)
一般社団法人カーボンニュートラル推進協議会代表理事
フランス国立行政学院(ENA)卒業。通商産業省(現経済産業省)に入省以来、欧州・ロシア・中東アフリカ課長、資源エネルギー庁・省エネルギー・新エネルギー政策課長、JOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)総務部長、外務省在フランス日本国大使館参事官、北海道経済産業局長、環境省特別参与などを歴任。現在、政策・再生エネルギーコンサルタントとして、IT、エネルギー関係企業、上場を目指すベンチャー企業などへの経営指導を行うほか、地方創生・地域振興の事業促進を手掛ける。著書に『日本を元気にする処方箋』(文芸社)、『AI(愛)ある自頭を持つ!』(産経新聞出版)がある。
増山壽一氏(以下敬称略):環境・エネルギーの国際動向では中国を注視すべきだと思います。中国は、先進国が「2050年カーボンニュートラル」を宣言した時、10年遅れの「2060年カーボンニュートラル」と言っていました。
ところが、政府が「一丸となって環境政策を遂行する」と決めた途端、一気に進みました。気づいてみれば、EVも再エネも全て西側の国々よりはるかに先を行っています。環境が自分たちの生き残りのカギになると捉え、省エネや新エネルギーに関わる技術の開発にも邁進しています。
こうした中国の動きに抗おうとしているのが欧州連合(EU)です。EV化を熱心に推進していたEUですが、中国にあっという間に抜かれてしまいました。彼らは今後、中国の環境政策をどうスピードダウンさせるかを隠れたアジェンダにしてくると思います。最終的に、どういうパワーバランスになるかはまだわかりません。
柏木:気候変動問題はローカルに対応できた公害問題と異なり、CO2をばらまく国があると、他の国にも影響を及ぼしてしまいます。途上国は「先進国はこれまでCO2を排出してきた。我々にも排出する権利がある」と主張します。
ただ、成長し規模が大きくなった国には当然、責任も生まれます。中国をはじめ、途上国は相当なスピードで対策を講じることが必要です。
竹内:エネルギーに関連する技術は、安価かつ大量に生産できなくてはなりません。世界が環境に関する野心的な目標を掲げれば、安価に大量生産することに長けている中国のマーケットが増えます。加えて、中国はレアメタルも国内に確保しています。
トランプ政権の発足後、国際交渉から米国が抜けた穴を埋め、世界に対して「みんなでグリーンを推進しよう」という声掛け役を務めるのは、EUではなく中国になるのではないかと私は思います。