竹内:低炭素を目指すべきというご意見に私も賛同します。それでこそ、日本の省エネ技術を生かせます。省エネ同様、重要なのが原子力です。これからAI(人工知能)の普及で急速に増える電力需要に対応するには、相当な原子力発電が必要になります。ただ、電力システム改革が進んだ中で原子力を増やすのは容易ではありません。規制の問題もあります。これらの問題をどう捉えていらっしゃいますか。
小林:まず、省エネ技術に関していうと、日本は高効率石炭火力の技術を持っています。石炭を使わざるを得ない途上国に対して日本の技術をどんどん供与、輸出し、世界全体のCO2排出量を削減すべきです。それが国益にも国際益にもかないます。
電力需要拡大への対応についてですが、再エネは現時点では値段が高く、不安定で調整電源が必要です。太陽光パネルは特定の国への依存度が高く、経済安全保障上極めて問題があります。
私はしっかり安全性を担保した上で、原子力を着実に進めていくべきという立場です。ただ、民間の電力会社が原子力のリスクを背負うのは限界があります。国が原子力のリスクをとるような仕組みを作れないかと問題提起しています。
また、規制の問題については、何事もゼロリスクはあり得ないので、「ゼロリスクよりもリスクマネジメント」という考え方が必要だと思います。
増山:最近、様々な政党が盛んに国益を主張しています。真の国益とは何だと考えているかをお聞かせください。
小林:3つに分けて考えています。第1が国家の主権と独立です。国民の生命と財産を守り抜くということです。第2に経済的繁栄の実現です。第3にわが国の基本的な価値観をベースとした国際秩序や国際ルールを形成していくことです。
ネット空間はややいびつで、好きか嫌いかの感情で物事を判断したり、異なる意見に攻撃的だったりしますが、それは我々自民党が目指す包摂的な社会とは異なります。

柏木 孝夫(かしわぎ・たかお)
コージェネ財団理事長/東京科学大学名誉教授
1946年東京都生まれ。1970年東京工業大学(現東京科学大学)工学部生産機械工学科卒。1979年博士号取得。1980~1989年米商務省NBS(現NIST)招聘研究員、1988年東京農工大学工学部教授などを経て2007年東京工業大学大学院教授に就任。2012年東京工業大学名誉教授に。専門はエネルギー・環境システム。2003年日本エネルギー学会学会賞(学術部門)、2008年文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)など受賞多数。経済産業省総合資源エネルギー調査会本委員、同省エネルギー・新エネルギー分科会長、水素・燃料電池戦略協議会座長等を歴任。著書に『スマート革命』『エネルギー革命』『コージェネ革命』『超スマートエネルギー社会5.0』など。
柏木:電力需要が伸びていくこれからの時代、日本はどのようなエネルギーシステムを構築すべきでしょうか。自由化が進み、旧一般電気事業者は稼働率の低い大規模電源を開発するのが難しくなっています。要所要所に分散型システムを構築すれば安全性もレジリエンスも高まります。
VPP(仮想発電所)の仕組みなどを取り入れれば、需要地が発電地になる可能性も出てきます。その中ではコージェネも役割を果たせると思いますがいかがでしょうか。
小林:分散型エネルギーも選択肢として間違いなく必要です。その中で、コージェネも一層広げていくことが重要だと思います。分散型エネルギーシステムの普及に規制緩和が必要であれば、状況を見ながら漸進的に進めていくことが求められます。
また、今後のエネルギー供給に関していうと、次世代エネルギーであるフュージョン(核融合)エネルギーに挑戦すべきだと思います。国家としてイノベーションを促すことが重要と考え、自民党から政府に働きかけて今年6月に「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を改定したところです。
これまでエネルギーは日本社会のアキレス腱になってきました。全ての産業の根幹にあり、わが国の自立性を担保するものとして、しっかり確保していきたいと思います。