波岡:コージェネを核としたまちづくりを進める場合、誰が旗を振るかという問題もさることながら、誰が費用を負担するかという問題も大きいと思います。1棟の建物ではなく多棟で面的に利用し、平常時には節電・省エネに、非常時にはバックアップ電源に役立てようとするならば、コージェネを導入した建物だけが費用を負担するというわけにはいきません。費用分担の仕組みをどのようにつくるかが問われます。
コージェネのような地域分散型エネルギーを導入することでレジリエンス性、BCP性が高まれば建物、街区、エリアのブランド価値が向上します。こうした無形の社会的な価値の増大をどのように認識し、評価するかがポイントになると考えます。
柏木:レジリエンス性やBCP性の価値に対する認識を広く浸透させるにはどうしたらいいのでしょうか。
安岡:多くの研究機関がBCP性の価値を定量化しようとしています。価値が目に見える数字で表されるようになると、一気にコージェネへの理解も深まるように思います。すぐにお金に換算できないものを定量化することは保険会社の得意分野ではないでしょうか。例えば、保険会社にBCP性の高い街の経済的価値を計算してもらうというのもいいかもしれません。
野田:おっしゃる通り、保険を使うというのはBCPの価値を認識してもらう一つのよいきっかけになり得ると思います。日本の都市ではあまり例がありませんが、世界では、自治体が災害に対して保険を活用する例が見られます。保険という手段を活用することで、防災性・減災性の重要さを再認識することになります。BCPへの対応も迫られ、エネルギーシステムの最適化やスマートコミュニティ構築といった話にはずみがつくかもしれません。
海外の企業は日本への進出にあたり災害リスクを大変懸念しています。自治体はこれまで、企業誘致のために税金の優遇や補助金拠出などの支援をしていますが、むしろ、災害に強い都市づくりを進めることが有効といえます。
柏木:コージェネを核とするスマートコミュニティは世界にも輸出可能なモデル。官民が連携し、また事業者同士でアライアンスを組み、パイプ&ワイヤー&ファイバー敷設、運営などで適切に役割分担しながら地域の資金循環を高めていくことが求められます。こうして力を備えた都市が要所要所にできていけば日本全体も活性化します。今後の進展に期待したいと思います。
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