自治体や企業がSDGsに取り組む際には、特に統合性を意識することが重要です。17のゴールや169のターゲットを個別に取り扱うのではなく、相互の関連に留意して一体的に取り組むことが必要です。
もちろん、個々の自治体や企業の事情に応じてゴールやターゲットに優先順位はあるでしょう。その場合も全体に配慮することが大事です。全体を見て経済・社会・環境の3側面をつなぐ統合的な取り組みをしていただきたいと思います。(図1)
統合的に取り組むことで課題全体を俯瞰的に認識し、課題間の相関性を把握でき、部分最適ではなく全体最適を図ることができます。トレードオフの緩和、シナジー効果の追求、コベネフィットの享受などが期待できます。
例えば、統合的取り組みとして木材産業に着目してみましょう。
日本では戦後、植林を進めたために多くの木材資源があります。しかし、木材産業は下流こそ整備されていますが、上流の整備が不十分で、それらの木材資源をみすみす腐らせ、海外から木材資源を輸入するというムダが生じています。
木材産業に対しSDGsの統合的取り組みを行い、上流から下流へスムーズにビジネスが展開できるようになれば、大きな経済効果があります。資源循環、国土保全、生物多様性、脱炭素化、地域雇用、健康/快適、技術開発、グリーン生産/消費/流通など多様なシナジー効果をもたらすと期待できます。
統合的取り組みに関して、行政の環境施策とコストを比較した研究も発表されています。自治体が「エネルギー対策のみ」「空気汚染と健康対策のみ」「気候変動対策のみ」に取り組んだ場合と、3つの対策に統合的に取り組んだ場合のGDP当たりの行政コストを算出。統合的な取り組みには相互にポジティブな相関があり、行政コストの大幅削減が可能になることを明らかにしています。

図1 SDGsで促進される統合的取組