スペシャルリポート

自治体・企業にとってのSDGs
~特に地域エネルギー事業の観点から~
統合的取り組みで“三方よし”のシステム構築を

ノンエナジーベネフィットに着目し便益を判断

「売り手よし、買い手よし、世間よしの『三方よし』の地域エネルギー計画を全国各地で立案し、推進してほしいと思います」(村上氏)
「売り手よし、買い手よし、世間よしの『三方よし』の地域エネルギー計画を全国各地で立案し、推進してほしいと思います」(村上氏)

 地域エネルギー事業にパラダイムシフトを起こすには費用対便益の改善が不可欠です。地域エネルギー事業の立案・実行には時間もコストもかかります。ステークホルダーの参加意欲を刺激するためにも魅力的な費用対便益のスキームを提示しなくてはなりません。

 光熱費の削減という直接的便益(エナジーベネフィット:EB)のみではインパクトに欠けます。環境対策がもたらす多様な間接的便益(ノンエナジーベネフィット:NEB)にも着目し、費用(コスト:C)と対比するべきです。費用対便益の概念を拡張し、「EB/C」ではなく、「(EB+NEB)/C」で算出します。

 環境価値創出に対する便益、地域経済への波及に伴う便益、リスク回避による便益、執務・居住環境の向上による便益、普及・啓発効果による便益など、金額換算できる多様なコベネフィットを発掘し、費用対便益を改善することが必要です。

 費用対便益を改善した事例として、沖縄県那覇市で始まっている「浦添分散型エネルギープロジェクト」を紹介しましょう。

 このプロジェクトの事業主体は浦添市と民間企業が出資するまちづくり法人。開発地区には大規模な商業複合施設やスポーツ施設、分譲マンション、戸建て住宅などがあります。

 浦添プロジェクトでは高効率なガスコージェネシステムを導入。電力供給を多重化しました。廃熱を空調に利用。地域全体のエネルギーを管理するCEMS(Community Energy Management System)の導入でエネルギー利用を最適化しました。CO2排出量は26%削減。冷房中心に利用する分散型エネルギーシステムのユニークな事例となり、東南アジアへの技術協力のモデルとなり得ると期待されています。

 このプロジェクトの直接的便益、つまり光熱費の削減は年間2億円。「EB/C」は0.93にとどまりました。一方、間接的便益には社会面がエネルギー供給停止等のリスク回避、啓発効果、経済面が不動産価値上昇や事業運営の経済効果等の地域経済への波及効果、環境面がCO2削減価値などがあり、年間2.5億円に達しました。「(EB+NEB)/C」は2.13。投資コストに対して2倍以上の便益を得た格好です。(図4)

 需要家(オーナー、テナント)、地域社会(浦添市、地域住民、政府)、地域エネルギー会社ごとに費用対便益を算定すると、それぞれ2.4、4.4、1.4といずれも十分な便益を得ています。このように、浦添プロジェクトは「売り手よし、買い手よし、世間よし」の“三方よし”が達成できました。全国各地で、こういう三方よしの地域エネルギー計画をぜひ立案し、推進してほしいと思います。

図4 浦添プロジェクトにおけるB/C の評価

図4 浦添プロジェクトにおけるB/C の評価
 

 
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