スペシャルリポート

ゼロエミッションビジネスへの展望
~日本の取るべき道~
システム・オブ・システムズを確立し世界に発信

企業に求められる「アジャイル」な対応

柏木 孝夫(かしわぎ たかお)
ゼロエミッションは1つのテクノロジー、1社のテクノロジーで実現できるものではありません。必要なのはシステム・オブ・システムズです。(柏木孝夫)

柏木:今、日本の火力発電でCO2の分離・回収を実行しようとすると、コストは6000~7000円/tCO2かかりますが、これを1000円まで下げたい。1円/kgCO2なら、1kWhで0.7kgのCO2を排出する石炭火力発電のコストはプラス0.7円で済みます。経済的なことをいえば、海外で分離・回収を実施した方が低コストで済みますが、川崎重工業にはその考えはありますか。

金花:今はまだ研究を始めたばかりですが、将来的には国際ループが必要と考えています。特にメタネーションには水素が必要ですから、海外展開しないといけないと思います。

柏木:液化水素やメタネーションはCO2を排出しません。既存のガスパイプラインに流し、コージェネレーション(熱電併給)システムを稼働させればCO2フリーで電気と熱を生むことができます。

 川崎重工業はグリーン水素、ブルー水素とメタネーションを組み合わせ、国際ループの中で自分たちが作る製品の動力源まで一気通貫で調達しようとしているのですね。引頭さん、企業のこのような将来像をどのように評価しますか。

引頭:非常に感動します。ただ、どの企業にも言えることですが、今描いているシナリオの前提や経営環境は変わる可能性があります。30年先のことを「必ずこれをやる」と決め打ちしてしまうのは危険な面もあります。

 経営者の方々には実情をよく見て、周囲の大手企業、ベンチャー企業、大学などと意見交換し、「このままではまずい」と思ったらすぐに戦略を策定し直す懐の深さを持っていただきたいと思います。

柏木:「アジャイル」ですね。機に応じた判断をすることが必要と。決断はしなくてはなりませんが、世の中の流れに応じて、うまくビジネスモデルができるように、素早く転換することも必要になってくるということですね。

金花:スタートアップ企業の方々は「ウーダ(OODA)ループ」という言葉をよく使います。観察(Observe)、方向付け(Orient)、決心(Decide)、実行(Act)の流れを繰り返すループです。大企業の場合、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)というPDCAを回して仕事をしますが、今の時代は計画を実行する時にはもう環境が変わっていることがあります。大企業もウーダループを回すことを心掛けるべきだと考えています。

 
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