スペシャルリポート

ゼロエミッションビジネスへの展望
~日本の取るべき道~
システム・オブ・システムズを確立し世界に発信

世界の脱炭素への本気度は高い

柏木:気候変動問題に関しては、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)がレポートを出し、人為起源による気候変化、影響などを報告しています。その科学的な知見をもとに、世界ではカーボンプライシングや炭素税、CO2排出量の上限設定といった話が出ています。金花さんは、世界の動きをどう見ていますか。

金花:17年にパリへ出張した際、気温が40度近くになりました。その時、ロンドンは36~37度だったといいます。私がイギリスに駐在していた1988~94年には考えられなかった気温です。温暖化は科学的に証明されていますが、人々も「これはおかしい」と肌身で感じているはずです。

 2015年にパリ協定が採択されてから、世界では次々とハイレベルな環境方針が生まれています。その中で注目しているのが「EUタクソノミー」です。EUタクソノミーはパリ協定を達成するための金融政策で、環境の切り口で企業を分類・選別し、点数の低いところには投融資をしないというもの。今年12月に法制化されると聞いています。まずはEU内で始まりますが、いずれ世界に広がるでしょう。それによって活動に窮する企業なども出てくると思います。

柏木:企業は環境に対する取り組みを評価され、それによって格付けまでされるようになっているのですね。世界の脱炭素への本気度は高そうです。引頭さん、金融市場にも脱炭素の動きは波及していますか。

引頭 麻実(いんどう まみ) 氏
引頭 麻実(いんどう まみ) 氏
東京ガス社外取締役/味の素社外監査役/AIGジャパン・ホールディングス社外監査役
1985年一橋大学法学部卒業。同年大和證券に女性総合職第1期として入社。大和證券経済研究所(現大和総研)に所属し電機業界などのアナリスト、ストラテジストなどを経験。IPO、M&Aなど投資銀行業務、コンサルティング業務などに携わり、2009年大和総研執行役員、13年同常務執行役員、16年同専務理事を歴任。16年大和総研を退社。証券取引等監視委員会委員を務める。2020年より現職。公認会計士・監査審査会、企業会計審議会、法制審議会、原子力損害賠償支援機構運営委員会などの委員及び官民競争入札等監理委員会委員長を歴任。

引頭:金融市場でも、環境に対する投資家の関心は大いに高まっています。EUタクソノミーは、その最先端の話です。

 こうした動きの発端となったのは06年、当時のコフィー・アナン国連事務総長が、各国金融業界に向け、投資の判断プロセスにESG(環境・社会・ガバナンス) の視点を組み入れる「責任投資原則(PRI)」を提唱したことです。現在は世界で3652社が署名しています。日本では15年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が署名。現在は運用会社など87社が署名しています。世界では今、グリーンボンドの発行が大変活況で、日本円で30兆円ほどに拡大しています。銀行貸し出し、ソーシャルやガバナンスに関する債券も合わせると、昨年は76兆円の調達があったといわれています。

 グリーンボンドの発行は日本でも拡大し、昨年1兆円ほどの規模になりました。発行体は、金融機関、企業、国際機関など様々です。一般的な債券に比べて金利が低く、期間が長いのが特徴です。発行体からすると、低コストで資金調達ができます。

 
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