スペシャルリポート

ゼロエミッションビジネスへの展望
~日本の取るべき道~
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金融市場で広がるグリーン投資

柏木 孝夫(かしわぎ たかお)
柏木 孝夫(かしわぎ たかお)
コージェネ財団理事長
東京工業大学特命教授/名誉教授
1946年東京都生まれ。70年東京工業大学工学部生産機械工学科卒業。79年博士号取得。80~81年米商務省NBS招聘研究員、88年東京農工大学工学部教授などを経て2007年東京工業大学大学院教授に就任。12年東京工業大学特命教授に。専門はエネルギー・環境システム。03年日本エネルギー学会学会賞(学術部門)、08年文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)など受賞多数。経済産業省総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会長、同調査会総合部会委員等でも活躍。著書に『スマート革命』『エネルギー革命』『コージェネ革命』『超スマートエネルギー社会5.0』など。

柏木:環境にしっかり取り組む企業や機関、環境に配慮したプロジェクトであれば、そういう債券を発行できるわけですね。一種の特権が与えられているようなものです。

引頭:中には環境に配慮していると見せかけて資金を調達する企業や機関もあります。金融の世界で「グリーンウォッシュ」と呼ばれています。グリーンウォッシュのリスクを防ぐためには適正な情報開示が必要ということで、今、議論になっているのが「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」。企業や機関がどのような情報を開示すればグリーンボンドやESGボンドを発行できるかというルールを定めています。金融市場はグリーン投資、ESG投資に本気です。世界最大級の資産運用会社であるブラックロックも、環境、ESGを軸に投資判断すると表明しました。日本の名だたる機関投資家もESG投資の方針を示しています。

柏木:金融市場が本気なのですから、企業経営も対応していかなくてはなりません。先進国は過去に化石燃料を使い、CO2を大量に排出しながら豊かになった経緯があります。途上国も同様に発展する権利があるとも言えます。CO2排出量削減について、先進国は途上国に〝枠〟を残す責務もあります。金花さん、その中で川崎重工業はどのような技術開発やビジネスモデルを推進していきますか。

金花:我々は引き続き製造する製品のエネルギー効率を向上させ、CO2排出量の削減に取り組みます。ただ、それだけではネットゼロは実現しません。カギはやはり水素です。川崎重工業には6つのカンパニーがありますが、全カンパニーを挙げて水素サプライチェーンの構築に邁進します。

 その1つとして、水素発電の実現に向け、水素ガスタービンの燃焼技術を開発しています。天然ガスと比べ、水素は燃焼速度が速く燃焼が不安定になりやすい面があります。また火炎温度が高くNOxも発生しやすくなります。昨年、これらの技術的な課題を解決した水素専焼ガスタービンの実証運転に成功しました。従来は「水噴射方式」を採用していましたが、現在は発電効率が高い「ドライ燃焼方式」で実現しています。

 鉄道会社と組み、燃料電池車両の計画設計も進めています。神戸空港島には液化水素を貯蔵する2500m3のタンクも完成させました。当社は1980年代に、現・宇宙航空研究開発機構(JAXA)の種子島宇宙センター向けに液化水素貯蔵タンクを製造し、以来30年以上保守・運用してきた実績があります。そのノウハウを生かして開発したタンクは真空構造で断熱性能が極めて高いのが特徴。100度のお湯を満タンに入れた場合、1カ月後でも温度が1度しか下がりません。マイナス253度の液化水素を安定的に貯蔵できます。

 液化水素を船に積み下ろしするローディングアームも開発しています。昨年は液化水素の運搬船「すいそ ふろんてぃあ」を完成させました。この船で今年5月にはオーストラリアに向かい、褐炭から製造した水素を液化し、神戸港に持ってくる計画を立てています。

 
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