スペシャルリポート

カーボンニュートラルに向けた
日本のトランジション戦略
アジアでの国際連携とイノベーションを

安価・大量・安定的な水素の調達がカギ

柏木:これからの日本は、カーボンニュートラルをいかに成長戦略につなげるかが重要な課題となります。政府は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に2兆円の「グリーンイノベーション基金」を創設し、水素など重点14分野を設定しました。これまで日本は「資源のない国」という言葉がついてまわりましたが、このグリーンイノベーションがうまく進めば、例えばCO2と水素からつくる合成燃料「e-fuel」を実現し、輸出国となることも可能だという気がします。

安価・大量・安定的な水素の調達がカギ

中山:私もそう思います。カーボンニュートラルには電化の促進が重要ではありますが、同時に電力部門の低炭素化を進めなければ意味がありません。それには太陽光と風力のさらなる導入、原子力の再稼働と寿命延長、再エネ増加に伴う調整力ニーズに対応するための電力貯蔵、送配電系統の強化、VPP(バーチャルパワープラント)など調整力供給メカニズムの多様化と普及…と様々なことを実現することが求められます。ただ、これらの施策を進めればコストアップにつながります。再エネと原子力とCCUSからつくる電気が今の2倍の価格になってしまうということであれば、うまく進まないと思います。

 最終消費部門でも、産業部門、運輸部門は水素の導入が不可欠です。水素をいかに安く大量かつ安定的に調達できるかがカギを握ります。

柏木:水素を安価に安定的に調達し上手に利用するためには、国際的な水素サプライチェーンを構築することと、地域で製造した水素を地域内で利用する「地産地消」を実現することの両輪で進めることが重要です。今のところ、水素活用について日本は世界の中でイニシアティブが取れているとは思いますが、田中さんはどのようにお考えですか。

田中:輸送部門では、トヨタ自動車は早くから燃料電池自動車に取り組んでいました。最近では、乗用車からバスなどの商用車に広がりを見せています。産業部門では、政府の「2050年カーボンニュートラル」宣言でようやく「産業も本格的に使わなくてはいけない」と動き出したように思います。産業が本格的に水素を利用するためには、トレーラーではなくパイプラインで運ぶ選択が浮上してきます。ドイツは風力や太陽光でつくった水素ガスをパイプラインで送る戦略を取ろうとしています。日本も電力のグリッドと平行して水素のパイプラインをつくり、電力ネットワークのバッファーにする戦略はあり得るのではないでしょうか。グリーンイノベーション基金で使う2兆円は研究開発が対象ですが、本来はこうしたインフラ整備にも資金を投じるべきです。

 
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