柏木:日本では2021年1月、強烈な寒波が到来し、暖房需要が高まりました。太陽光は全滅で、パナマ運河の渋滞で液化天然ガス(LNG)の調達もままならず、電力需給が逼迫する事態が起きました。今後、気象に左右される再エネが増えた際、エネルギーセキュリティをどう守るかは重要な問題です。いかがお考えですか。
中山:日本が米国やEUと違うのは、電力ネットワークがメッシュ状ではなく串型になっていることです。特に北海道と九州は1つしか連系線がなく非常に脆弱です。EUではどこかの国で風が吹かなくても、別の国では吹きます。大きなネットワークで結ばれているので、その間で電力を融通できる強みがあります。そう考えると、日本で太陽光、風力の大幅導入拡大を可能にするには、そもそも連系線を強化することが必要です。再エネで需要と供給を絶えず一致させる「同時同量」を可能にする蓄電システムなども必要になります。
田中:日本は周波数も東西で50Hz、60Hzと異なります。グリッドの連系も良くありません。地震や津波で停電が起きてしまう脆弱なメカニズムでエネルギー安全保障上も問題です。再エネ普及のためにもグリッドを改善しなくてはなりません。私は送電会社を1つにすることも考えるべきだと思います。
それから、日本だけで再エネを主力電源とした電力を安定供給していくのは難しいので、海外と電力線をつなぐオプションも持った方がいいと思います。風力や太陽光をうまく使いながらできるだけ低コストで脱炭素を実現するには、イノベーティブにエネルギーシステムを構築することが必要です。
柏木:日本がトランジション戦略を構築する上では米国、オーストラリア、インド、シンガポールと組むのが1つの有力な方法ではないかと思います。石炭を豊富に抱えるオーストラリアとは前向きにCCSの話を進めることができます。インドは新興国の中でも成長のポテンシャルが高い。シンガポールはASEAN(東南アジア諸国連合)のリーダー的存在であり、いまだカーボンニュートラルを宣言していないASEANの国々を取り込む上でも重要です。いかがですか。
中山:国際的な協力体制の構築は非常に重要です。特にインドと組むのは戦略としてとても良いと思います。米国は政権が変わると方針も変わるので難しいかもしれませんが、インド、オーストラリア、日本のバブル方式でネットゼロにしていくのは良い方法ではないでしょうか。
日本のCCUSのポテンシャルは排出量に対して十分ではありません。オーストラリアのビクトリア州には褐炭が豊富にあります。その褐炭から水素を取り出し、CCUSでオフセットしたブルー水素を次世代のビジネスとする計画があります。このブルー水素を日本に運び込むこともできます。インドは2070年にカーボンニュートラルを達成すると宣言しましたが、彼らにとっては大変チャレンジングな取り組みです。日本が協力を申し出たら良いパートナーになれると思います。