
吉田 康子(よしだ・やすこ)氏
シェルジャパン代表取締役社長
1990年早稲田大学資源工学科(物理探査専攻)学位取得、1994年慶応義塾大学大学院経営学修士(MBA)取得。投資銀行、コンサルティング会社を経て2002年シェルガス&パワージャパン(現シェルジャパン)に入社。2004年シニアアドバイザー(サハリンⅡプロジェクト担当)、2006年シェルデベロップメントオーストラリア社シッピングアドバイザー(NWSLNGプロジェクト)、2007年同社コマーシャルアドバイザー(Gorgon LNGプロジェクト)を経て2010年シェルジャパンのシニア・ビジネスアドバイザー(上流案件担当)に就任。2012年LNG&経営企画部長、2015年シェルミャンマーエナジー社などを歴任後、2019年から現職。
柏木:エネルギーは生活と産業の基盤ですが、最近は電力需給が逼迫する事態が相次いでいます。エネルギー自由化の中で、旧一般電気事業者は稼働率の悪い発電所を休廃止しています。一方、主力電源化を目指し導入量を拡大してきた再生可能エネルギーは天候次第という不安定性を抱えています。どう安定供給を保てば良いのでしょうか。
山下:電力自由化にこうした欠点があるということは、先行していた欧州などから聞こえてきていました。特に燃料費がかからず、限界費用がゼロの再エネを増やせば、高コスト構造にある電力会社は採算を取るのが難しくなります。
フランスは今、自由化の範囲を問い直しつつあります。国内最大の電力会社フランス電力(EDF)を再国有化する方針を示したというニュースもありました。欧州が迷い始めたら日本はどうするのかと私も関心を持っています。
佐々木:これまで、電力の安定供給については法律で「電気需要の平準化」が求められていました。今年5月の「省エネ法」や「エネルギー供給構造高度化法」の改正で、それを「電気需要の最適化」に見直し、デマンドレスポンス(DR)を入れやすい制度設計にしています。もう1つ、「電気事業法」を改正し、電力会社に対し発電所の廃止を事前に届け出ることを義務づけました。供給力が不足しないよう、事前に国のチェックが入るようにしたのです。ただ、いずれも対症療法です。
エネルギー自由化にはメリットもデメリットもありますが、今はデメリットが顕在化した状況と言えます。将来に対する投資が不足し、エネルギー技術の研究開発や発電所建設にお金が回らなくなりました。前者は、政府が創設したグリーンイノベーション(GI)基金などで解決しつつあります。後者についても官の役割が重要です。官が出資や債務保証をすることで、民間企業も脱炭素を志向しながら発電所を造れるようになります。こうしたフォローアップで少しずつベースの発電力は増えると考えています。
柏木:デマンドレスポンスやバーチャルパワープラント(VPP)を活用し、安定供給とCO2削減の両立を目指すことは大事ですね。エネルギーの安定供給は大きな課題であり、今後も議論が必要だと思います。