柏木:岸田政権は成長戦略の重要な柱として「デジタル田園都市国家構想」を掲げています。デジタルトランスフォーメーション(DX)とグリーントランスフォーメーション(GX)を一体化した都市を全国各地に作り、成長と脱炭素を同時に目指す構想です。このデジタル田園都市をASEAN諸国などアジアに形成できれば、世界のカーボンニュートラルに貢献しつつ、日本の成長が可能になります。この構想について、どんなお考えをお持ちですか。
山下:ASEAN諸国もこれから人口減少が進んでいきます。つまり、限られた労働力をいかに効率的に経済成長に結びつけるかという課題に直面します。また、カーボンニュートラルは中央の大きなシステムに地方がつながる形だけでは達成が困難であるという認識も浸透しつつあります。
こういったことを考え合わせると、デジタル田園都市構想のエッセンスは世界中に活用できます。DXとGXを組み合わせ、減りゆく人口で新たな産業を興し経済を成長させるという方向性は、世界各国で共有してもらえるのではないかと思います。
吉田:シェルは一昨日(2022年7月6日)、世界最大となる再生可能エネルギー由来の水素生産プラントをオランダで建設する最終投資決定をしたところです。再生可能エネルギーから作った水素をその地域で使う「地産地消」のモデルでは、特にエネルギーの有効活用が可能です。
再生可能エネルギーからグリーン水素を生産し、エネルギーとして活用するカーボンニュートラルのエネルギーハブが様々な地域に展開されることが理想です。
新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに本格的に広がったリモートワークによって、9時から17時まで東京のオフィスで働く必要はないとの柔軟な考え方も増えつつあります。これを機に企業が一極集中を回避し、カーボンニュートラルを実現した街の中で、カーボンニュートラルに関連するビジネスを手掛けることがあってもいいと思います。
日本各地で低炭素社会実現に向けたプロジェクトが始まっており、このような取り組みを拡大していくことが大事だと思います。
佐々木:コロナ禍を経て、私自身も都市にいなくても仕事ができると実感しています。東京では皆さん毎日満員電車で通勤し、住宅ローンを払うために必死に働いていますが、デジタルの力を活用すれば、そういう問題も解決できます。
デジタルと親和性の高いグリーン水素も取り込み、DXとGXを実現することで、各地域の自然や産業を生かしたオーダーメードの分散型エネルギーシステムを構築できます。地域の成長・発展の良いチャンスではないかと感じています。
柏木:カーボンニュートラル達成のキーワードは省エネ・電化・水素化です。DX、GXはこの3つを結びつけます。
日照や風況が良い地域に電力需要を持つデータセンターなどを建設すれば、エネルギーを地産地消しつつ地域に新たな産業を形成できます。一方、エネルギー密度の高い都市では、速効性の高い脱炭素テクノロジーであるコージェネレーション(熱電併給)システムの導入が有効です。需要と供給を制御することで大規模電源と共存する分散型エネルギーシステムを実現できます。
これはデジタル田園都市構想のリアリティある1つの形でしょう。地域の特徴を生かしたエネルギーシステムの確立が日本の成長につながると考えます。
