柏木:例えば、堅牢なビルに電気も熱も生み出すコージェネレーション(熱電併給)システムを核とするエネルギーシステムを構築すれば、強靱な地域をつくることができます。今、そういう取り組みは進んでいますか。
井上:地域の防災拠点となる建物に、耐震性に優れた中圧ガス管を引き込み、コージェネシステムを核とする分散型電源の構築を推進している自治体もあります。こういう建物があると、付近で被災した方も避難できる防災拠点として有効に機能します。コージェネの重要な社会的価値の1つだと思います。政策的にも、BCP(事業継続計画)やBCD(事業継続地区)の観点からも促進されていますが、まだまだ取り組み余地は残されていると思います。
柏木:「絶対につぶれては困る」という公共建築物については、規制を導入しながら支援するのが効果的だと思いますがいかがでしょうか。

伊藤明子(いとう あきこ)氏
前消費者庁長官
公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター顧問
島根県出身。1984年京都大学工学部卒業。同年建設省(現国土交通省)入省。2017年国土交通省住宅局長、2018年内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局地方創生総括官補を歴任。2019年消費者庁長官に就任。2022年消費者庁を退官し公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター顧問に。2023年伊藤忠商事取締役に就任。
伊藤:現在は「推奨するがコージェネを入れなくてはいけない」とまではなっていません。大事なのは、平時からのまちづくりから考えることだと思います。緊急時の防災拠点だけをピンポイントで考えると、「非常用電源の設置」という議論に傾きがちです。まちづくりのありようを考えてこそ、コージェネを導入するといった取り組みが進みます。今、まちづくりの方向性は変わりつつあります。以前は職住分離で、用途純化していました。今は職住近接で「コンパクト+ネットワーク」化し、用途をごちゃまぜに複合化しようとしています。
代表例が富山市です。「富山市都市マスタープラン」で、鉄道をはじめとする公共交通を活性化させ、沿線に居住・商業、行政、文化等の都市機能を集積させることでコンパクトなまちづくりを実現しました。建物単体ではなく、エリアで見て強靱性や効率性を評価するという方向は、コージェネにとっても望ましいあり方だと思います。
柏木:「コンパクト+ネットワーク」化したまちに自然エネルギーなどの分散型電源が入れば、より強靱な地域になります。一つひとつがスマートグリッドのような形になれば、万一の際も全滅することはありません。百花繚乱のエネルギーシステムの1つの姿と言えそうです。
井上:その際のカギはやはりコージェネです。蓄電池は電力負荷を平準化することが可能ですが、コージェネは複数のお客様の間でエネルギーの最適利用を実現できます。
まちづくりの観点では、大阪ガス本社のある大阪市で「御堂筋まちづくりネットワーク」というエリアマネジメント活動を推進しています。エネルギー事業者としては、街づくりではコージェネの熱も複数の需要家間で融通し、最適化する取り組みや、産業用では工業団地の中でマイクログリッドを構築し、企業間のエネルギー需要の凹凸を融通する取り組みなどを進めています。