柏木:CO2排出にまつわるコストを誰に課すかも重要です。仮に、賃貸の入居者にCO2コストを課すのであれば、環境性の良いビルの人気が高くなる可能性があります。
伊藤:そうですね。既に外資系グローバル企業の中には「環境性能の良い建材を使ったビルを」と要望するところもあります。
今まで、賃貸住宅の大家さんには省エネ対策を講じるメリットはありませんでした。投資は増えるものの、その分、賃料が上がることはなかったからです。これから省エネ性能のラベルが付くようになると、入居者に「この物件に住めばエネルギー料金が安くなる」と思ってもらえるようになり、賃貸住宅の状況も変わるかもしれません。
まずは省エネでそういう動きが進みつつあります。カーボンはその後です。
何にせよ、情報が開示されないと消費者も選びようがありません。きちんと数字で示すことが今回の省エネ性能ラベルの狙いで、それが習慣として定着すると、みんなが環境性の高いものを選ぶようになる可能性はあると思います。
柏木:井上さん、エネルギーの分野でも、CO2コストを内部化した情報開示についての取り組みは進んでいますか。
井上:製品ごとに、どれだけのCO2を排出しているかを算出する仕組みとしては、既にカーボンフットプリントがあります。製造業のお客様の中には、海外の森林保全などでオフセットしたカーボンニュートラルな都市ガスを利用していることをホームページや統合報告書に掲載されているケースもあります。Daigasエナジーは、2023年9月から、生活者とともに脱炭素社会の実現に挑戦する「チャレンジカーボンニュートラルコンソーシアム」の活動を始めています。Daigasエナジーは脱炭素支援パートナーという役割を拝命し、企業に対し、どのエネルギーを使うと、製品のCO2排出量をどれだけ削減できるかをガイダンスする役を務めています。
現在は、ドラッグストアやスーパーで、ドリンク、シャンプー、スナック菓子、ハムなど環境に配慮したプロセスでつくった日用品・食品を陳列・販売しています。ゆくゆくは、情報開示を進め、プレミアム価格を消費者の方に受け入れていただくような取り組みに発展させたいと考えています。社会全体でそうした許容性が出てくれば、環境コストはかなり内部化されるのではないでしょうか。
柏木:消費者を巻き込みながら、そういう流れをつくることは大切ですね。
伊藤:SDGsの1つに「つくる責任、つかう責任」があるように、消費者も社会に責任を果たすことが必要です。実際、消費者の中には、エネルギー消費や食品ロスに興味を持つ人も若者を中心に増えてきています。
ここでも重要なのが情報開示です。すべてに関係するエネルギーについての意識をどのように喚起し、わかりやすく訴求するのか。移動手段を変える、住む場所を変えるなど、ライフスタイルの転換につながる行動変容をどのように起こすのか。それぞれの企業に考えてみていただきたいと思います。