スペシャルリポート

カーボンニュートラルの実現と新しい街づくり
オープンイノベーションで新たな価値創出を

脱炭素「プラスアルファ」の価値創出が求められる

柏木:村木さんは海外の都市計画を専門としていらっしゃいます。面での取り組みについてどうお考えですか。

村木 美貴 氏(むらき・みき)
村木 美貴 氏(むらき・みき)
千葉大学大学院工学研究院教授
1991年日本女子大学大学院家政学研究科住居学専攻修了。同年三和総合研究所入社。1996年横浜国立大学大学院工学研究科計画建設学専攻修了。東京工業大学大学院社会理工学研究科社会工学専攻助手、ポートランド州立大学ポートランド都市圏研究所客員研究員を経て2002年千葉大学工学部都市環境システム学科助教授、2008年千葉大学大学院工学研究科建築・都市科学専攻准教授、2013年同教授(現工学研究院)に就任。

村木:私が主に研究するイギリスの都市計画では、CO2排出量を削減するため、面的開発が当然のこととされています。

 例えば、25ヘクタールに及ぶ再開発が行われたキングスクロスでは地域にガス管は通っておらず、熱の利用者は地域熱供給から購入しています。225ヘクタールに及ぶロンドンオリンピックサイトでも、すべての建物を熱供給管に接続しなければなりません。それぞれ2005年比50%、1990年比60%のCO2を削減しています。イギリスで最初の脱炭素型再開発とされるバンクサイドヤードでは、42万平方メートルの敷地に立ち並ぶオフィスや住居、商業施設などが低温の熱を使い切っています。単体でなく面でいかに効率を上げられるかを考えています。

 新規開発の場合、後から脱炭素に向けた取り組みをするのは難しく、最初の計画が肝心です。イギリスではエンボディドカーボン(建物を建築・維持管理・解体する際のCO2排出量)とオペレーショナルカーボン(建物を運用する際のCO2排出量)を組み合わせ、ゼロカーボンを目指す動きが主流になっています。

宮本:連携しながら街づくりを進めるプロセスにおいて重要なキーワードがオープンイノベーションです。日本企業にはどうしてもクローズドな体質が染みついています。協調領域と競争領域を見極め、協調領域を増やさなくてはなりません。視野を広げ、提携相手を見つけていくことが大事だと思います。当社のオープンイノベーションに関する取り組みの1つが、2023年9月に運用を開始したイノベーション拠点「温故創新の森 NOVARE」です。スタートアップも含む国内外の知を結集し、新たなイノベーションの創出に挑戦しています。

柏木:カーボンニュートラルの達成にオープンイノベーションが必要というのは重要な指摘です。オープンイノベーションに関して、日本と諸外国では違いがありますか。また、そこからどのような価値を創出すべきでしょうか。

村木:いろいろな立場の人が一緒になって解を探るという点では、諸外国も日本も変わらないと思います。

 近年、イギリスでは脱炭素型の開発を目指すのは当然のこと、それ以外に地域の課題解決につながる取り組みをプラスすることが志向されています。例えば、あるプロジェクトでは工事に関わる人員の10%を地元で、また3~5%をトレーニングした失業者でまかないました。新しく建てたビルには地域経済の成長のため、地元の商業者を入居させています。複数の地域貢献により、地域価値を向上しているのです。

 かつて、グーグルがトロントにスマートシティを計画したことがありました。その際も温室効果ガス排出量89%削減という目標だけでなく、4万4000人の新規雇用創出、売り出す住宅の市場以下の価格設定、クルマ以外の移動手段の確保などを打ち出していました。

 これからの街づくりは、脱炭素プラスアルファの価値創出をゴールに据えることが重要だと思います。

 
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