柏木:これからの有望なテクノロジーに水素が挙げられます。水を電気分解してつくる水素は燃料電池で酸素と反応させることで電気や熱を生み出します。発電時に水を生成するため、循環型のエネルギーシステムを構築できる可能性があります。
そのままエネルギーとして使うだけでなく、合成燃料(e-fuel)やSAF(持続可能な航空燃料)として利用することも可能です。カーボンニュートラル達成のために極めて重要なエネルギーですが、清水建設では水素に関してどのような取り組みをしていますか。
宮本:国立研究開発法人産業技術総合研究所と共同開発した建物付帯型水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC」の導入を進めています。再生可能エネルギーの余剰電力を水素に変え、水素吸蔵合金に蓄えておき、必要に応じて取り出して燃料電池で電気や熱をつくり供給するシステムです。
2021年に北陸支店の新社屋に実装しました。通常時は電力のピークカットに、災害時はBCP(事業継続計画)電源として、太陽光から得た電気を余すことなく利用できます。「温故創新の森 NOVARE」にも「Hydro Q-BiC」を導入しました。街区熱融通システム「ネツノワ」によって複数建屋や複数熱源の最適なエネルギーマネジメントを実施しています。
水素利活用をスモールスタートで検討するお客様向けに、「Hydro Q-BiC Lite」も開発しました。40フィートコンテナサイズで移動も可能です。
4月に開幕する大阪・関西万博ではNTTパビリオンに設置し、燃料電池で発電した電気をパビリオン内に供給します。
水素発電のように、水素をメインのエネルギー源とするためには、いかに安く水素をつくるかにかかります。当面は分散型電源の1つとして、変動性のある再エネのカバーやBCP対応のエネルギーとしての用途が中心になるのではないかと思います。
柏木:地域熱供給に水素を活用する試みもあります。燃料の30%程度に水素を混合し、徐々に比率を高めていけばカーボンニュートラルに近づきます。
宮本:当社は2025年4月より、東京都港湾局、産総研、東京テレポートセンターなどと街区の脱炭素化を推進する共同実証研究を実施します。
山梨県で太陽光発電からつくったグリーン水素を調達・輸送し、水素吸蔵合金タンクに充填し貯蔵します。燃料電池によるグリーン電力と、タンクから取り出した水素を使い水素混焼ボイラーから生み出した熱を地域熱供給街区に供給し、脱炭素化を推進するものです。
村木:これから水素を使った様々な仕組みが出てくると思います。街づくりの中で考えると、それらを使う建物がどれだけ増えるかがカギです。ネットワークにつながるものがたくさんなくては効率的な運用ができません。
イギリスの開発では熱供給管につなげなくてはいけないという規制があり、徐々に需要家が増え、エネルギー価格が下がります。日本の場合、個々に任されているので需要家が増えず、エネルギー価格も高止まってしまう可能性があります。